楽曲のコメント
「そのとき法律は改正されるであろう」は、租税法律主義(憲法84条)を歌ったものである。租税法律主義とは、法律の根拠がなければ、国家は租税を賦課・徴収できないし、また、国民は租税の納付義務を負わないということである。「~裁判官よ、よく聞け、素直に条文を読め、拡大解釈、縮小解釈、それはしてはならない~」なんて歌っているのであるが、メロディーは、怒った中島みゆき風にと、作曲担当者(古屋氏)に注文を付けた。歌詞の内容は、近畿税理士界(第664号)に載せた拙稿の「判例からみた租税回避の否認とその限界」である。あの有名な武富士事件(最高裁平成23年2月18日判決)の裁判長である須藤裁判官の補足意見をベースに書いたものである。
「判例からみた租税回避の否認とその限界」(近畿税理士界№664・令和元年8月10日)

歌詞
- 君は課税の公平を説く
みんな等しい税の負担をと
僕は法律の大切さを説く
それがなければ納税義務はないと
裁判官よよく聞け 素直に条文を読め
拡大解釈 縮小解釈
それはしてはならない
法律を創造するな 素直に理解せよ
たとえそれが妥当でなくても
君が不公平というならば
そのとき法律は改正されるだろう - 君は知ってるだろうか
代表なければ課税はないと
僕は公平性の大事さを知る
それがなければ法に従わないと
裁判官よよく聞け 素直に条文を読め
権力持ってる税務署に
常に惑わされずに
裁判官は孤高であれ 悪法もまた法なり
たとえそれが租税回避であっても
君が不公平というならば
そのとき法律は改正されるだろう
そのとき法律は改正されるだろう
(十六訂版)図解租税法ノート(清文社・2025年)の14頁から20頁参照

この「図解租税法ノート」の第2章は、「租税法の基本原則」となっている。租税法の基本原則としては、「租税法律主義」と「租税公平主義」がある。この原則は、租税の争いの中でしばしば対立する。「納税者の主張」は、「租税法律主義」を、「課税庁の主張」は、「租税公平主義」をそれぞれ強調する。
なお、租税公平主義は、「立法の原理」であり、租税法律主義は、「執行上の原理」であることから、租税公平主義が害されるというのであれば、原則として、立法の改正が求められるということになる。納税者が考える租税回避によって、課税の公平が害されるというのであれば、裁判官は、法律の解釈を拡大したり、縮小したりして、妥当な結論を求めるのではなく、原則として、法律の改正をすべきであるということになる。「そのとき法律は改正されるだろう」は、それを歌っている。