歌詞
- 誰が考えたか知らないけれど
源泉徴収の義務を負わされ
公共の福祉に応えるもので
日本憲法に違反しないと
何の補償もないけれど
税金の徴収に付き合わされて
僕は誰に 何を言えばいいの - 徴収義務者は納税義務者ではない
徴収と納付の義務を負わされ
源泉は支払う時に義務が成立している
こんなきまりの法律が
自動確定方式と
僕は誰に 不満を言えばいいの - 債務免除を社員にしたら
これは何なのどうなるのかな
債務免除は給与所得で
源泉徴収の義務がある
怖い顔したタックスマン
何故給与所得なのか教えてよ
僕は誰に 文旬を言えばいいの - 土地を買ったのは先月のこと
買った相手は外国人で
源泉の義務があるなんて
所得税法に書いてある
こんな法律誰が
作ったの作ったの知らないよ
僕は誰に 恨みを言えばいいの
楽曲のコメント
『源泉徴収 恨み節』は、源泉徴収制度の重要な問題を取り上げている。この歌の4コーラスには、それぞれ、重要な判例が歌詞の背景にある。
1コーラス
源泉徴収義務については、憲法29条(財産権)の争いがある。「最高裁昭和37年2月28日判決」では、次のように述べている。
「給与所得者に対する所得税源泉徴収の制度は、徴収方法として能率的、かつ、合理的であって、この徴収義務者の徴収義務は憲法の条項に由来し、公共の福祉によって要 請されるものであるからこの制度は憲法29条1項に違反せず、また、この制度のため 徴収義務者において、財産上の負担を負うとしてもこの負担は、同条3項にいう公共の ために私有財産を用いる場合には該当せず、同条項の補償を要するものではない」
2コーラス
源泉徴収義務者は、本来の納税義務者ではない。源泉徴収義務者は、支払うときに徴収の義務を負い、その徴収した税金を納付する義務を負っている。そして、源泉徴収に よる所得税の税額は、自動的に確定するもの(これを『自動確定方式』という。従って、 源泉徴収による所得税についての納税の告知は、徴収処分であつて課税処分ではない)であるが故に、支払者が支払時に自らにおいて、源泉徴収義務があると判断できることが必要である。「最高裁昭和45年12月24日判決」は、次のように述べている。
「税務署長が、支払者の納付額を過少とし、またはその不納付を非とする意見を有するときに、これが納税者たる支払者に通知されるのは、前記の納税の告知によるのであり、この点において、納税の告知は、あたかも申告納税方式による場合の更正または決 定に類似するかの観を呈するのであるが、源泉徴収による所得税の税額は、前述のとおり、いわば自働的に確定するのであつて、右の納税の告知により確定されるものではない。すなわち、この納税の告知は、更正または決定のごとき課税処分たる性質を有しないものというべきである。」
3コーラス
理事長に対する債務免除が給与所得であるとされた有名な判例(最高裁平成27年10月8日判決)がある。
「権利能力のない社団の理事長及び専務理事の地位にあった者が当該社団から借入金債務の免除を受けることにより得た利益は,①同人が当該社団から長年にわたり多額の金員を繰り返し借り入れていたところ,当該社団がこのような貸付けを行ったのは同人が上記の地位にある者としてその職を行っていたことによるものとみるのが相当であること,②当該社団が同人の申入れを受けて上記借入金債務の免除に応ずるに当たっては当該社団に対する同人の貢献についての評価が考慮されたことがうかがえることなどの判示の事情の下においては,所得税法28条1項にいう賞与又は賞与の性質を有する給与に該当する。」
4コーラス
外国人から不動産を購入するときには、土地の譲渡対価は支払い段階で一律に所得税等の源泉徴収をしなければならない(所法161①五)。売主である外国人の無申告を源 泉徴収でカバーすることを目的としているのであるが、買主は、売主が外国人であるか否か、判断することが難しい故に、理不尽と感じるであろう。これに関しては、不動産 の譲渡人が非居住者に該当し、譲受人が源泉徴収を負うという「東京地裁平成28年5月19日判決」がある。